インタビュー

2017年5月15日 NEW

1日に何回も「ありがとう」といわれる仕事は介護だけ。この一言が心の支えになっています

私の介護の仕事

川畑拓郎(かわばた・たくろう)さん 介護職歴11年 ー 社会福祉法人櫟会 特別養護老人ホームくぬぎ苑 ー

アイキャッチ画像:白髪の利用者と目線を合わせて話している川畑さんの様子。
プロフィール写真:パッチワークの作品がかかっている壁の前でインタビューに答える川畑さんの様子。
川畑拓郎(かわばた・たくろう)さん

【プロフィール】
高校3年の夏休みにヘルパー2級(現:介護職員初任者研修)を取得。卒業後に、新規開設の同法人に入職。介護福祉士の国家資格を取得して、特別養護老人ホームくぬぎ苑のユニットリーダー、フロアリーダー、平成28年から主任を務めている。

【保有資格】
ヘルパー2級(現:介護職員初任者研修)、介護福祉士(国家資格)

キャリアアップ

4年目 ユニットリーダー 介護福祉士の資格取得
6年目 フロアリーダー
10年目 主任

親の勧めで介護の資格を取得、実習現場で感じた違和感から介護の現場へ

画像:車椅子に座っている利用者の方と目線を合わせ話している川畑さんの様子。
 

 私が介護の仕事に就いたのは、実は、多くの方のように特別な思いがあったわけではありません。しいて言えば、高校3年の夏休み、親の勧めで「ヘルパー2級」(現・介護職員初任者研修)の講座を受けたことでしょうか。
実習先で、集団ケアの現場を目の当たりにし、強烈な違和感を覚えました。トイレ誘導の時間になると列ができ、食事の場面では横一列に並んだ高齢者の口に、次々にスプーンで食事を運ぶという光景に、「相手は人なのに…」と感じたことを、今でも思い出します。

 18歳で働き始めたころは、介護の知識も技術も乏しかったので、先輩のやり方を見て覚えるのに必死でした。でも、3年ほど経験を積むと、徐々に「利用者のために尽くす介護」を追求したいと思うようになり、上司との意見の食い違いに悔しい思いをすることも増えてきました。それと同時に、他業種で働く同級生と自分の置かれた環境の違い、例えば、休みや給与を比較し、「この先、働き続けることができるだろうか」と不安にもなりました。

 ただ、そんな時にいつも支えになったのが、高齢者とかかわる中でいただいた、たくさんの「ありがとう」という言葉です。ドアを閉めるだけで「ありがとう」、タオルを渡すだけで「ありがとう」…。当たり前のことをしただけなのに、これだけ一日に何回も「ありがとう」と言われる職業はあるでしょうか?この11年間続けてこられたのは、その時々に感じた「うれしい気持ち」が支えになっているからだと思うのです。

「暮らしの継続」をモットーに、より豊かな暮らしを模索しています

画像:女性の利用者の方の右手を軽く支えながら目線を合わせている川畑さんの様子。
 

 私たちの施設では、「暮らしの継続」を重要視しています。誰でも住み慣れた自宅で暮らし続けるのが一番です。ならば、施設での暮らしをできるだけ自宅での暮らしと近づけるように、「ユニットケア」という手法を使って、その実現を試みています。

 「ユニットケア」では、家庭的な雰囲気の中で、顔なじみのスタッフによる個別ケアが可能です。例えば、起床時間も人によって異なります。朝食もご飯と漬物という人がいれば、パンだけ、または食べないという人もいます。趣味趣向によって、余暇の過ごし方も千差万別なはずです。
 そこで、私たちは「24時間シート」を導入しています。シートには、その方の嗜好や性格、自宅での過ごし方などを細かく記します。施設に入所して約一月かけて、スタッフ全員で肉づけをします。その後は、その方にとって望ましい暮らしの在り方を模索しながら、シートの見直しを繰り返し、暮らしがより豊かになるように努めています。

働く職員、全員が将来像を描けるような職場をめざしています

画像:男性スタッフの前で机の上にファイルを広げ立った状態で話している川畑さんの様子。
 

 平成28年から主任になり、私自身、スタッフの働きやすい環境づくりにも力を入れています。介護の仕事は、成果を数値化しにくいだけに評価が難しいのですが、この施設で働き続けながら、自分自身の将来像が描けるように、キャリアパスを整備しているところです。

 また、玄関の飾りや室内の環境整備も各担当ユニットのスタッフに任せています。「暮らしの継続」という、施設の理念に沿っているか、自宅にあると不自然なしつらえはないかなど、皆、試行錯誤しながらも、楽しみながら取り組んでいます。

 介護の仕事は、やりがいがあります。例えば、病院を退院後、寝たきりだった人が10分ずつでも起き上がれるようになると、もっと頑張ろうと思います。帰宅願望のある方を、どうすれば自宅までお連れできるかを多職種のチームで検討し、わずかな時間でも自宅で過ごしてもらうことができた時の利用者の笑顔は格別です。

特別養護老人ホームとは?

画像:フローリングの部屋の中の一区画が茶道が嗜むことができる畳になっている施設の共有空間の様子。
 

 特別養護老人ホームは、常に介護が必要な人を受け入れ、入浴や食事などの日常生活上の支援や機能訓練、暮らしのサポートをします。原則として「要介護3」以上の人で、在宅生活が困難な人が入居しています。
 くぬぎ苑は、“暮らしの継続”をモットーとし、入居者10人前後を一つの「ユニット」と位置づけ、家庭的な雰囲気の中、顔なじみのスタッフが、入居者の生活リズムを尊重した暮らしをサポートする「ユニットケア」を実践しています。

施設概要

画像:正面に1階建ての入り口があり、左右がレンガ調の壁になっている施設の様子。
社会福祉法人櫟会 特別養護老人ホーム くぬぎ苑

社会福祉法人櫟会 特別養護老人ホーム くぬぎ苑

〒820-0052 
飯塚市相田114番地の1
電話:0948-24-8000