EPA受入れ事例紹介

2018年3月30日 NEW

介護人材の国際化を進め、多様な人材を受け入れる土台づくりを目指す

EPA受入れ事例紹介

画像:インドネシア出身の3名の女性研修者が笑っている様子

糸島市にある介護老人保健施設まえばる老健センターは、平成28年からEPA(Economic Partnership Agreement)による介護福祉士候補者を受け入れ、現在、インドネシア出身の3名が介護スタッフとして働いています。まえばる老健センター原川浩一事務長、水﨑進一介護主任、医療法人恵真会の統括本部渡辺真理さんに、施設の受け入れ体制の整備や外国人介護人材受け入れによる施設の変化などについてお聞きしました。(以下、文中敬称略)
 

EPA導入の目的を全職員が共通理解できるように研修を実施

画像:ベージュ色のカーテンの部屋で椅子に座り両手やや開いた状態でテーブルの上に置き、EPA導入のインタビューに答える原川さんの様子
原川浩一事務長

――EPA介護福祉士候補者の受け入れを始めるきっかけについて、お聞かせください。
原川
 介護業界の人材不足は深刻で、人材を募集してもなかなか応募者がない状況が続いていました。そこで、雇用の間口を広げ、多様な人材を受け入れる土台づくりをしていこうと、介護人材の国際化に取り組むことにしました。
 
渡辺
 当法人としては、EPA介護福祉士候補者の受け入れは人材不足の解消が目的ではありません。介護福祉士候補者は6カ月を過ぎた場合、または日本語能力試験N3以上の日本語能力があると認められた場合は人員の配置基準に加えることができますが、現在はそれもしていません。介護福祉士候補者の目標は介護福祉士資格の取得です。私たちとしては彼女たちがそれを最優先できるように勤務時間内に勉強時間を設けたり、夜間勤務から外し、勉強する時間を確保しやすいように図っています。

画像:ベージュ色のカーテンの部屋で椅子に座り両手をテーブルの上で軽く組み、EPA導入のインタビューに答える水崎さんの様子
水﨑進一介護主任

――受け入れに際し、どのような準備をしましたか?
原川
 まず職員に対して研修を行いました。EPAの制度や当法人がなぜ外国人介護人材の受け入れを開始するのかを明確に伝えることを心がけました。全ての職員が共通理解できるよう研修を繰り返しました。また、全体勉強会を開き、候補者の出身国であるインドネシアの文化や生活習慣について学び、受け入れの準備をしました。利用者や家族には文書でお知らせし、理解を呼びかけました。
 
水﨑
 現場スタッフの一番の心配は言葉の問題でした。言葉が通じないことで、コミュニケーションがとれるのか、利用者に対して適切なケアができるのかなど、インドネシアにおける介護の水準が未知数なだけに不安はありました。そこで、OJT(On-the-Job Training)を取り入れ、丁寧な指導ができるように教育体制を整えました。
 
渡辺
 マニュアルの見直しも行いました。そこは若手スタッフに協力を求め、分かりにくい部分は作り直し、漢字には読み仮名を入れ、誰が見ても分かりやすいマニュアルとしました。

マニュアルの見直し、教育体制の構築で働きやすい職場づくりを実現

画像:施設内で一人の女性研修生が紙を両手に持ち、そのそばで指導している女性職員の様子

――実際に候補者たちを受け入れ、現場ではどのような変化がありましたか?
渡辺
 EPA介護福祉士候補者は、自国で日本語を学習し、さらに来日後も約半年の研修を終えてから、それぞれの施設での就労になります。言葉遣いも丁寧で、特に敬語は私たち日本人よりも正確ですので、「自分たちも言葉遣いを見直そう」と良い刺激になりました。
 
水﨑
 言葉遣いもそうですが、彼女たちは利用者と接する際もとにかく丁寧です。認知症の方が何度も同じことを繰り返しても、手をそっと添えて常に笑顔で対応しています。その様子を見ていたら、ハっとさせられることがあります。そして、まだ介護福祉士の資格を持ってないスタッフも、「彼女たちに負けられない」と資格取得に向けて良い刺激を受けています。

画像:ベージュ色の壁の部屋で椅子に座り、EPA導入のインタビューに答える渡辺さんの様子
渡辺真理さん

原川
 EPA介護福祉士候補生たちを受け入れることで、現場スタッフの負担が増えるのではないかと心配もありましたが、「案ずるより産むが易し」です。施設としてもマニュアルの見直しから教育体制の再構築を行ったことが、働きやすい職場づくりにもつながり、多様な人材を受け入れる自信を得たように思います。EPAに取り組む以前は、外国人の雇用に後ろ向きな面もありましたが、今ならばしっかりと受け入れができると確信しています。

画像:円卓が並んでいる歓迎会の会場内で女性研修生2名を囲んで6名の職員と笑顔で映っている様子
歓迎会の様子

――今後、介護現場で活躍する外国人の人材は増えていくと予想されます。その上で受け入れ施設はどのような心構えが必要でしょうか?
原川
 人材の国際化を進めたことで、職員の研修体制の充実や施設としての一体感が生まれたと感じています。新しい制度を取り入れる上で、現場の不安はつきものです。まずは職員への周知、研修が肝心です。
 
渡辺
 EPA介護福祉士候補者を受け入れて3年目を迎えました。順調なのは、現在、受け入れている3名の人柄がとても良いことに助けられている部分も大きいです。今後何かしらの課題に直面した時に備え、受け入れ施設同士で情報交換ができる場づくりが必要だと感じています。

心を込めた介護ができるように笑顔で頑張ります

画像:ベージュ色の壁の部屋で椅子に座り、インタビューに答えるロサンニ・サラギフさんの様子
「日本人スタッフも利用者さんも皆さん、優しいです。安心して働ける環境に感謝しています。」

EPA介護福祉士候補者
ロサンニ・サラギフさん
インドネシア出身
平成28年12月から同施設に勤務
 
 私は以前から海外で働きたいと思っていたので、EPAプログラムを知ってチャンスだと思いました。来日当初は駅で切符を買うこともできませんでしたが、今では友達もでき、先日は福岡市の海ノ中道に遊びに行きました。分からないことはそのままにせず、何でも訊ねることで、仕事も生活も楽しくなると思います。
 
 平成32年1月に介護福祉士国家試験に挑戦します。合格したら、そのまま日本で介護の仕事を続けたいと考えています。心を込めた介護ができるように、笑顔で頑張りたいです。

試験に合格して利用者さんが安心して暮らせるようにお世話したいです

画像:ベージュ色の壁の部屋で椅子に座り、インタビューに答えるサルティカさんの様子
「休みの日は近くの公民館でエアロビクスを習っています。体を鍛えることができるので、介護の仕事にも役立ちます。」

EPA介護福祉士候補者
サルティカさん
インドネシア出身
平成28年12月から同施設に勤務
 
 私はEPAプログラムを利用して日本で働くために、看護が学べる大学に進みました。施設では週に3回、勉強の時間をいただいています。うち1回は日本語の先生から授業を受けます。もっと日本語を話せるようになって、介護福祉士国家試験にも絶対、合格したいです。
 
 朝のミーティングでは、毎回、私たち候補者が申し送り書を読み上げます。これも日本語の勉強に役立ちます。また、大学で勉強した看護の知識は、介護現場でも役立っています。もっと勉強して、利用者さんが安心して暮らせるように、お世話をしたいと思っています。

利用者さんから頑張ってと言われると励みになります

画像:施設内で利用者の前で両手をあげ、にこやかに体操しているエルニタ・プランシスカ・プルバさんの様子
「バラの花が好きです。きれいな花を見ていると気持ちが落ち着きます。優しい介護ができる人になりたいです。」

EPA介護福祉士候補者
エルニタ・プランシスカ・プルバさん
インドネシア出身
平成29年12月から同施設に勤務
 
 私は大学を卒業してすぐ、EPAプログラムに参加しました。この施設で働くようになって4カ月です。まだスタッフの方たちに教えていただくことがたくさんあり、毎日が勉強です。でも、先に来日している先輩スタッフがいるので、安心して過ごせています。
 
 まだ日本語が上手ではないけれど、優しい言葉遣いになるように気を付けています。レクリエーションで歌ったりすることが大好きです。日本の童謡や演歌も少し覚えました。利用者さんから「頑張って」と声を掛けられると、とてもうれしく、励みになります。

施設概要

画像:白い雲を背景に駐車スペースの奥に一部3階建ての施設の様子
介護老人保健施設まえばる老健センター

医療法人恵真会 介護老人保健施設まえばる老健センター
〒819-1106
糸島市志登567-1
電話:092-323-2211

経済連携協定(EPA)に基づく介護福祉士候補者の受け入れについて

 日本と相手国の経済上の連携を強化する観点から公的な枠組みで特例的に行うもので、インドネシア、フィリピン、ベトナムからの外国人介護福祉士候補者が日本の介護施設で就労・研修をしながら日本の介護福祉士資格の取得を目指すものです。介護福祉士候補者の受け入れは、国内で唯一の受け入れ調整機関である公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)を通じて行います。